左からアイディーエス 小寺、東京大学 菊池様、アイディーエス 小山

共同研究プロジェクト概要

東京大学大学院経済学研究科附属・政策評価研究教育センター(CREPE)では、CREPEが有する実証経済学の知見と東京商工リサーチ(TSR)が長期に渡って構築してきた日本全国の企業を対象とする企業ビッグデータを融合して、EBPM(証拠に基づく政策立案)の実証研究を進めています。
大量、且つ機密性の高いTSRの企業ビッグデータを取り扱う上で、AWSが提供する可用性の高いクラウド環境は、必要不可欠な分析基盤となっています。

これまでのオンプレミス環境からAWSのクラウド環境に移行し、研究環境のセキュリティを担保しつつ、利便性が向上することとなり、研究が加速することを期待しています。

CREPEと菊池様が進める研究活動について

CREPEは、2017年10月に設立して以来、国や自治体が進めるEBPM(証拠に基づく政策立案)に資する様々な研究・教育活動を推進してきました。マイクロデータを用いた実証分析を中心として、労働経済や国際経済、産業組織、教育経済、マクロ経済といった多岐に渡る領域の研究・教育活動を実施しています。

菊池様は、東京大学大学院経済学研究科・植田健一教授と共同で、日本経済の生産性の変遷を企業レベルで分析し、金融システムや関連する金融制度との関係性に関する実証分析を進めています。特に、日本の中小企業が抱える倒産リスクに関して、金融機関の信用リスク(不良債権や自己資本比率等)が企業融資に及ぼす影響を分析しています。

カスタマープロフィール

菊池様

東京大学経済学研究科 学術専門職員
システム管理責任者
博士(理学)

菊池 樹

AWS移行前に抱えていた課題

AWS移行前は、本学情報基盤センターのオンプレミスサーバ環境でTSRのデータを利用しておりました。
オンプレミスサーバの場合、障害発生時にはデータセンターに直接訪問して対応する必要があり、
特に復旧までに時間を要する場合には、システム管理者として大きなプレッシャーがかかる状況も多々ありました。
加えて、テレワークが普及する中、学外からVPNを介してサーバにアクセス可能な環境整備を実現してきましたが、
利便性の向上に伴う需要に反して、オンプレミスサーバの拡張性に限界を感じていました。

課題への解決策〜クラウド環境への移行

オンプレミスサーバの課題を打破するためには、可用性の高いクラウド環境への移行しかないと考えており、
以前から様々な相談をしてきた経緯もあり、AWSのクラウド環境への移行を決断しました。
オンプレミスサーバからクラウドへの移行にあたり、まずは、機密性の高いデータのバックアップを兼ねて、
Amazon S3へのデータ移行を優先的に進めました。

また、ユーザーの利便性を考慮に入れて、オンプレミスサーバと同様の環境を用意することにも重きを置き、
Amazon EC2にWindows Serverを導入し、Amazon S3のファイル共有実現のため、AWS Storage Gatewayを活用しています。

なお、経済学の分野では必須とも言えるソフトウェアのStataは、Amazon EC2にインストールして、スケーラブルな仮想サーバの特性を活かして、研究プロジェクトのニーズに合わせて適宜、インスタンスの仕様変更を実施しています。
その結果、メモリを要するStataを用いた複雑な分析を実行可能な可用性の高い環境を実現することにもつながりました。

AWS移行後のアウトカム〜機械学習を用いた研究プロジェクトにも適応

経済学の実証研究では、データの巨大化やモデルの複雑化が進んでおり、さらに、異なるタイプのデータを組み合わせることにより付加価値を高めることが可能なこともあり、一時的に高い計算能力を要する処理が増えています。
その点、スケーラビリティの高いクラウド上の仮想サーバの有用性が発揮されているところです。

CREPEとTSRの共同研究プロジェクトでは、研究プロジェクトごとに使用するデータや分析手法が異なるため、
個々のニーズを汲み取りつつもプロジェクト全体の管理を実行していくことの難しさはありますが、AWSのクラウドサービスでは、ニーズが発生した際にニーズに応じたサービスを迅速に導入できることに大きなメリットを実感しています。

また、AWSに移行後、TSRの企業ビッグデータを用いた共同研究に工学系研究科の研究者も参画することになり、
機械学習を用いた企業間取引の分析環境として、Amazon SageMakerを導入し、複雑なネットワーク分析を実行しています。

株式会社アイディーエスにAWSの構築を依頼したきっかけ

当初は、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社より請求書払いを代行いただけるパートナー企業としてご紹介いただきました。
その後、大学・研究機関での経験も豊富な株式会社アイディーエスとの信頼関係のもと、AWS構築の依頼をさせていただきました。
当初はオンプレミスのストレージ容量の増加ができない課題があったので、まずはオンプレミスからAWSクラウドへの移行のお手伝いをさせていただき、それがきっかけで分析環境や機械学習を取り入れた環境の構築を依頼しました。

「学術研究への貢献」としてのAWSへの期待

近年、経済学のみならず、あらゆる領域において巨大化するデータ、及び、生成AIに代表されるモデルの巨大化も同時に進んでいます。
他方、限られた資源の中から新たな価値を生み出すため、データ連携による付加価値の創造もまた一つの方向性です。
いずれの場合でもボトルネックとなるのは、データ同士を結合する際に一時的に大量のメモリを要することにあり、
スケーラブルなサービスを提供するAWSには多様な分析ツールに対応する形で、今後、更なるインフラ面での機能拡充に大いに期待しています。

なお、経済学の分析手法では、変数の増加に伴い、行列サイズが増加し、
その結果、計算に必要となるメモリが爆発的に増加するという問題があります。
近年、経済学の領域でも因果推論の分析では機械学習を組み合わせた手法が用いられており、また、ネットワーク分析等に関しても発展が著しいこともあり、Amazon SageMakerが経済学の領域でもより効果的に活用できるようになることを期待しています。