こんにちは!SunnyPay事業部の磯野です!

AWSを使い始めた当初は、請求の管理について深く考える必要はなかったかもしれません。
しかし、アカウント数が増えたり、子会社や別組織とAWSを共同利用するようになると、次のような課題に直面することがあります。

  • 利用しているアカウントと、実際に支払っている主体が一致していない
  • 請求書が複数に分かれ、経理処理が煩雑になる
  • 組織外のアカウントの費用をまとめて管理できない

こうした「請求の責任が分散している状態」は、可視化だけでは解決しません。
そんな中、この問題に正面から向き合うための機能として2025年11月19日に ” AWS Billing Transfer ” が一般提供を開始しました。

この記事の結論

AWS Billing Transferは、AWSの利用者と支払い責任者を分離し、請求の主体を整理するための機能。
コストの可視化や削減を目的とした仕組みではなく、「誰がAWS料金を支払うのか」を明確にすることで、組織横断・組織外を含むAWS利用を管理しやすくする。

請求管理や経理処理に課題を感じている企業にとって、Billing Transferは有効な選択肢となる。

■目次

  1. AWS Billing Transferの概要
  2. Organizations・Billing Viewとの違い
  3. AWS Billing Transferの導入ステップ
  4. どのようなケースで有効か
  5. 導入時の注意点
    まとめ

この記事はこんな人にオススメ

  • AWS の最新アップデートを効率よくキャッチアップしたい担当者
  • 他の AWS 利用者の知見・ベストプラクティスを学びたい人
  • コミュニティやネットワークを広げたい AWS ユーザー・開発者

AWS Billing Transferの概要

AWS Billing Transferとは?

AWS Billing Transferは、あるAWSアカウントで発生した利用料金の請求責任を、別のAWSアカウントへ正式に移すための機能です。

ポイントは、「コストの見え方を変える機能」ではなく、誰が支払うかを定義し直す仕組みであることです。
インフラ構成やリソースの使い方には一切手を加えず、請求と支払いの主体だけを整理できます。

つまり、

  • 利用者アカウント
  • 請求・支払いアカウント

この2つを分離できるのがBilling Transferの本質です。

これまでのAWS請求管理の限界

AWS Organizationsを使えば、組織内のアカウントをまとめて請求管理できます。
また、Billing Viewを使えば、複数アカウントのコストを横断的に可視化することも可能です。

ただし、これらはいずれも「見る」「管理する」ための仕組みであり、請求の最終責任そのものを変更するものではありません。

  • 組織外のアカウントは統合できない
  • 支払い主体は変わらない
  • 経理・契約の整理は結局手作業

といった制約があり、特にグループ企業や外部パートナーを含む環境では、請求管理が複雑になりがちでした。

Billing Transferで何が変わるのか

Billing Transferを利用すると、以下のような整理が可能になります。

  • AWS利用は各アカウントが継続
  • 請求書の発行・支払いは特定のアカウントに集約
  • 組織をまたいだ請求責任の一本化

重要なのは、コストが自動的に下がる機能ではないという点です。
Billing Transferは、請求の流れと責任範囲を明確にするための仕組みであり、FinOpsや経理統制を支える土台となる機能です。

Organizations・Billing Viewとの違い

Billing Transferは、よく既存の請求系機能と混同されますが、役割は明確に異なります。

AWS Organizations・Billing View・Billing Transfer の機能概要

AWS Organizations:組織の「統制」と請求
「家族」としての統合です。最も基本的かつ強力な統合機能です。請求をまとめるだけでなく、親(管理アカウント)が子(メンバーアカウント)に対して、セキュリティポリシー(SCP)を強制適用できます。

役割:請求の一元化 + ガバナンス(権限管理)
支払いの流れ:全てのアカウントの請求が、管理アカウントの支払い方法(クレカ等)に合算されて請求されます。
制約:アカウントは一つの組織にしか所属できず、親の強力な支配下に置かれます。

Billing View (Billing Conductor等):コストの「可視化」
「家計簿」の共有です。 実際にAWSへ支払う「請求責任」は移動させず、「誰がいくら使ったか」を見やすく計算し直して表示する機能です(例:AWS Billing Conductor)。

役割:実際の請求書とは別に、配布用(社内チャージバック用)の明細を作成・表示する。
支払いの流れ:変更されません。AWSへの支払いは、元の契約者が行います。
ポイント:あくまで「表示」の機能であり、法的な支払い義務者は変わりません。

AWS Billing Transfer:請求責任の「移管」
「スポンサー」契約です。 ここがBilling Viewとの決定的な違いです。Billing Transferは、単にデータを見るだけでなく、「AWSに対する支払い義務(インボイスの宛先)」そのものを、組織の壁を越えて移動させます。

役割:組織の管理権限(ガバナンス)はそのままに、請求の宛先だけを別組織へ付け替える。
支払いの流れ:組織Aが利用した分の請求書が、組織B(親組織やリセラー)に届き、組織BがAWSへ支払います。
ポイント:組織Aのエンジニアリングやセキュリティには干渉せず、「支払い」だけを引き受けます。

AWS Organizations・Billing View・Billing Transfer の機能比較表

AWS Organizations・Billing View・Billing Transferの機能をまとめた比較表を作成したのでご活用ください!

機能名AWS OrganizationsBilling ViewBilling Transfer
主な役割統制 + 請求統合可視化 (計算・表示)支払い移管
AWSへの支払い義務親アカウントが負う変わらない (元の所有者のまま)移管先が負う
他組織への干渉強い (ポリシー強制可能)なし (見るだけ)なし (払うだけ)
利用シーン同一企業・部門の管理社内配賦、チャージバック計算M&A、ホールディングス、再販

AWS Billing Transferの導入ステップ

AWS Billing Transferの設定方法を簡単にご説明します。
操作自体は非常にシンプルですが、請求の移管元と移管先、双方の操作が必要です。

① AWSマネジメントコンソールから請求とコスト管理に入り、左ペインの下の方にある「請求転送」を選択します。

日本語翻訳だと「請求転送」もしくは「請求の転送」と表示されているようです。

② AWS Billing Transferの画面に入ったので、「招待を送信」を選択します。

赤枠で囲まれた、どちらでも同じ画面に遷移します。

③ 必要事項を入力し「招待状を送信」を選択します。

これで、Outbound Billing タブに請求転送通知が届くことになります。

どのようなケースで有効か

Billing Transferは、すべてのAWS利用者に必要な機能ではありません。
一方で、次のようなケースでは非常に効果を発揮します。

  • 親会社が子会社のAWS費用をまとめて支払いたい
  • グループ再編や事業譲渡により請求主体が変わった
  • SIerや請求代行事業者が顧客のAWS請求を担う
  • 経理・FinOpsの観点で支払い責任を明確にしたい

逆に、単一アカウントでAWSを利用している場合や、請求管理に課題を感じていない環境では、導入メリットは限定的です。

導入時の注意点

Billing Transferは技術者だけで完結する機能ではありません。

  • 契約主体の確認
  • 支払い方法・税務処理の整理
  • 最終的な責任範囲の合意

といった点について、経理部門や管理部門との調整が不可欠です。
「便利そうだから使う」という判断は避け、誰の責任で支払うのかを明確にする目的で使うことが重要です。

まとめ

AWS Billing Transferは、目立つ機能ではありませんが、AWSの利用規模が広がったときに「効いてくる」タイプのアップデートだと感じました。

請求の可視化では解決しきれなかった「誰が支払うのか」という問題に、AWS側で整理する選択肢が用意されたのは大きな変化です。

AWSの請求管理が少し面倒になってきた、そんな段階に入った組織であれば、一度知っておいて損はない機能だと思います。

AWSの利用料金、もう少し最適化できるかもしれません。

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