2025年10月、AWSから新たに発表された「Amazon EC2 Capacity Manager」。
これは、EC2インスタンスのキャパシティ利用状況を一元的に可視化・分析できる新しい管理機能です。
これまでのAWS運用では、Auto ScalingやEC2 Fleetを使ってリソースの増減を自動化できる一方で、 「どのインスタンスタイプをどの程度使っているのか」「リザーブドやスポットの利用効率は適切か」といったキャパシティの“使われ方”を俯瞰的に把握する仕組みが不足していました。
EC2 Capacity Managerは、この課題を解消し、オンデマンド・リザーブド・スポットなどさまざまな購入モデルを横断して使用状況を一か所で監視・分析・レポートできる環境を提供します。
■目次
- EC2 Capacity Managerとは
- これまでの課題:スケーリング運用の限界
- Capacity Managerでできること
- 設定・利用方法
- Auto ScalingやFleetとの関係
- メリットと今後の展望
まとめ
1.EC2 Capacity Managerとは
EC2 Capacity Managerは、オンデマンド・リザーブド・スポットなど複数の購入モデルを横断して、EC2キャパシティの利用状況を一元的に可視化・分析できる管理機能です。
AWSの利用環境が複雑になるほど、「どのリソースがどこで、どれだけ使われているのか」を把握するのは難しくなります。
Capacity Managerは、これらの情報を1か所に集約し、利用状況・稼働率・コスト構成を横断的に確認できるようにすることで、運用判断をサポートします。
Auto Scalingが“スケールの増減を実行する仕組み”だとすれば、Capacity Managerは“スケーリング結果を俯瞰して把握する仕組み”と言えるでしょう。
2.これまでの課題:スケーリング運用の限界
EC2を使ったスケーリング運用では、以下のような課題がよく発生していました。
- キャパシティの利用状況が分散し、全体像を把握しづらい
- 複数のリージョンやアカウントでリソースを管理しているため、統一した指標が持てない
- オンデマンド・リザーブド・スポットの使い分けが属人的になり、コスト最適化が後手に回る
Capacity Managerは、こうした課題を解消するために設計されています。
AWS環境全体のキャパシティデータを一元化し、「今どのリソースがどんな使われ方をしているか」を即座に把握できるようにします。
これにより、過剰・不足・偏りといった運用リスクを早期に発見し、根拠に基づいた判断が可能になります。
3.Capacity Managerでできること
Capacity Managerでは、次のような運用支援が可能です。
キャパシティ利用状況の可視化
オンデマンド、リザーブド、スポットといった複数の購入モデルを横断して、インスタンスタイプ別・リージョン別に使用状況を一覧で確認できます。
これまで複数の画面を行き来しなければ把握できなかった稼働状況やトレンドが、一つのダッシュボードに統合され、アカウント全体のリソース配分を即座に把握できます。
特定リージョンやインスタンスタイプの過剰・不足を可視化することで、容量の偏りに早く気づけるのも大きな利点です。
コスト・効率の分析
Capacity Managerは単なる使用量モニタリングではなく、「どのリソースがどれだけ効率的に使われているか」を分析する機能も備えています。
リザーブドインスタンスの消化率、スポット利用の安定性、オンデマンド偏重によるコストインパクトなどを俯瞰的に評価できるため、FinOpsチームやインフラ管理者がコスト最適化を検討する際の出発点になります。
これにより、どの購入モデルの比率を見直すべきか、どこに非効率が隠れているかを把握しやすくなります。
データエクスポート機能
ダッシュボード上で確認した利用データは、CSV形式でエクスポートできます。
これにより、外部BIツール(QuickSightやTableauなど)で独自の可視化レポートを作成したり、社内の月次レポートに組み込んだりと、分析の幅を広げることが可能です。
公式にサポートされている「エクスポート → 外部分析」という流れだけに基づいた運用ができるため、実務でも扱いやすい機能です。
4.設定・利用方法
現在(2025年11月時点)、EC2 Capacity ManagerはマネジメントコンソールまたはAWS CLIから利用可能です。
Capacity Managerを有効化する利用手順は次の通りです。
①Capacity Managerを開く
メニュー欄にも「New」として出ていますね。
②有効化したら、データ収集が完了するまで待つ
ちなみにこの犬は「AWS環境を見回って問題を見つける“セキュリティパトロール犬”」というコンセプトのマスコットだそうです。
③データ収集が終わったら、ダッシュボードが表示されるようになる
EC2の利用があれば、このダッシュボード画面に全体のキャパシティ状況が表示されます。
5.Auto ScalingやFleetとの関係
Auto Scaling Group(ASG)はアプリの負荷に応じてEC2を増減させ、EC2 Fleetは複数のインスタンスタイプや購入モデルを組み合わせて柔軟にリソースを確保する仕組みです。
これらが“実際に動かす仕組み”だとすれば、Capacity Managerはその動きを俯瞰し、利用状況を横断的に把握するためのモニタリング基盤です。
どのリージョンやインスタンスタイプでリソースが多く使われているか、どの購入モデルのコスト効率が高いかを一画面で比較・分析できるようになり、Auto ScalingやFleetの運用改善に役立つデータを提供します。
6.メリットと今後の展望
EC2 Capacity Managerの最大の利点は、キャパシティの「使われ方」を見える化し、より根拠ある運用判断を支援できることです。
運用者はこれまで、複数の画面やスプレッドシートを使ってリソース利用状況を把握していましたが、Capacity Managerの登場により、オンデマンド・リザーブド・スポットの使用状況を統合的に分析できるようになりました。
これまで運用者は、複数の画面やスプレッドシートを行き来しながらリソースの利用状況を確認していました。
Capacity Managerの登場によって、オンデマンド・リザーブド・スポットなどの使用状況を統合的に分析できる基盤が整い、コスト最適化やリザーブドインスタンス購入の判断、スケーリング設定の見直しなどを“データドリブン”に進めやすくなりました。
AWSは今後、Auto ScalingやSavings Plansとの連携強化を進める方針を示しており、Capacity ManagerはEC2運用におけるキャパシティ管理の新しい標準的なアプローチとして活用が広がっていくことが期待されます。
まとめ
Amazon EC2 Capacity Managerは、スケーリングやキャパシティ調整を“行う”サービスではなく、それらを支えるデータ基盤として、利用状況を横断的に可視化・分析するツールです。
クラウドリソースの使われ方を把握し、将来の需要やコストを見据えた意思決定を行う。
そのための新しい標準機能として、Capacity ManagerはAWS運用の信頼性を高める存在になるでしょう。
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